無趣味

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無趣味

1年3組教室 西日に照らされながら教室の中央に2人の少女達が向かい合って座っている。 雛倉「では、まず名前とクラスをお願いします」 シャーペンの消しゴム部分をマイクに見立て、眠たげな眼差しをした少女、雨乃凪に問いかける。 雨乃「…クラスいる?同じクラスじゃん」 雛倉「そうだけど、これ校内掲示物だから一応言って」 雨乃「…1年3組、雨乃凪です」 雛倉「はーい、じゃあ次に趣味は?」 再び雨乃の元にシャーペンの消しゴム部分を突きつける 雨乃「趣味は……ゲームと音楽聴くくらい?…多分」 雛倉「なるほどなるほど…じゃあ…ずばり、今熱中してる事は?」 雨乃「…熱中か…」 羽織っているパーカーの紐を指先で弄りながら考え込む 雨乃「うーん…」 雛倉「無いならさっきの趣味と同じでも良いよ?」 雨乃「じゃあ、それで」 雛倉「ほいほーい」 雨乃「ねぇ」 雛倉「ん?」 スマホの録音アプリの停止ボタンをタップし、メモを執る雛倉 雨乃「雛倉は?熱中してる事とか、好きな事あるの?」 雛倉「あるよ、アニメ観賞でしょ?あとゲーム実況とか、模型誌読んだりとか、あとあと…」 雨乃「…いっぱいあるね」 雛倉「そりゃそうだよ!全部大好きだもん!だからさ、凪も何か1つ全力でやってみれば?」 雨乃「うーん…そうだね、どうせ暇だし…」 雛倉「じゃないと折角の高校生活台無しだよ?あ、これ纏めるから先帰ってて」 雨乃「分かった、じゃあ明日」 雛倉「ほいほーい、ありがとね」 ━━━ 1年棟1階廊下 雨乃「(熱中してる事ねぇ…)」 鞄からイヤホンを取り出し耳に装着しようとした瞬間、背後からか細い声が聞こえる ?「あ…あのぅ…」 雨乃「ん?」 振り向くと目が前髪で隠れたツインテールの少女がいた 雨乃「(活発と根暗の融合体みたいな髪…)どしたの?」 ?「あ、図書室ってどこで…どこにあるか分かりますか?」 雨乃「図書室?それなら向こうの建物の2階の右側…」 ?「あー、はい…」 雨乃「…一緒に行く?」 ?「え、でも…良いんですか?」 雨乃「良いから聞いてるんだよ?」 ?「あ、すみません…ありがとうございます」 雨乃「ううん、もし間違ってたら嫌だし」 ?「あ、えっと…そういえば席隣ですよね」 雨乃「え?」 ?「え?」 雨乃「同じクラス?」 ?「え?…その筈です」 雨乃「…なんかごめんね、あまり人の名前とか顔とか覚えらんなくて…えっと…私が『あ』で番号的に…『う』…『え』…絵鳩さん?」 ?「っ!はい!…憶えててくれてたんですね」 雨乃「うん、自分でもびっくり…じゃあ、私の名前は?」 絵鳩「雨乃凪さんです」 間髪入れずに答える 雨乃「え、うん…」 絵鳩「すごく特徴的なので」 雨乃「それは良い意味で受け取っていいの?」 絵鳩「も、勿論です!その眠そうな目がとても印象に残って…」 雨乃「誉めてる…?」
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