僕らは、近い存在になりたい

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「……あれ、どこかで会ったことあるよな?」 廊下を歩いていると、前から歩いてきた男に声をかけられる。 「大学で同じサークルでした」 「じゃあそこで会ってたんだ。ここに来たってことは今度のドラマで共演する比嘉(ひが)くん?」 「……はい。比嘉愛斗(あいと)です」 「愛斗くんか。愛情がたっぷりな演技しそうな名前だね。よろしく」 にっこりと俺に笑いかけて、手を差し伸べてくる。 「こちらこそ、よろしくお願いします」 ぺこりと頭を下げて、そして顔合わせの行われる会議室へと向かう。 彼は、茂田愛斗(しげたまなと)。 俺と同じ漢字を書くけど、読み方は違う。 そして、チョイ役ばかり貰ってきた俺とは違っていまや超人気俳優だ。 今回、茂田さん主演でBLものをやるということで、巷ではとてつもない話題になっているけど、有名でもない俳優が相手役をできるだなんて思ってもいなかったから、決まった時の衝撃は半端なかった。 茂田さんは俺が大学一年のときの大学四年生。 ほんの少しだけど、演劇サークルで一緒に活動していたことがあって『愛情たっぷりな演技しそうな名前だね』とは、初めてあった日に言われた言葉でもあった。
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