私の想い

1/1
前へ
/3ページ
次へ

私の想い

翌日。男子バレー部は練習試合のため隣町の高校に向かった。 女子バレー部は二面のコートでそれぞれ試合をしている。いつもは交代要員の私もずっと出っぱなしだ 「木村ー、サーブ、ガンバ!」 構える前に私はユニフォームのポケットに右手を入れた。中にあるものを撫でてから、手を出す。 落ち着いて、落ち着いて。呼吸をしてから、ボールを高く上げてジャンプ――。ボールの跳ねる音が体育館に響いた。 「ナイスサーブ!」 「いいぞ、木村!」 「こりゃあ明日の天気は荒れるね」 「木村、秘密の特訓でもしたのかよー」 先輩や同級生にやんやいわれて、ちょっぴり恥ずかしい。 ユニフォームのポケットには、昨日のペットボトルのキャップが入っている。 もう夏木がくれた熱は残っていないけれど、これを握りしめるたびに彼からパワーをもらっているような気がした。 明日私がサーブを決めたら、夏木はどんな顔をするんだろう。驚くかな。誉めてくれるかな。 夏木は私より大きくなって、どんどん強くなった。でも私、追いかけてもいいよね。 「木村、次も決めろよー!」 「はい!」 夏木も今頃、先輩方に同じ言葉をかけられているのかな。私もあなたに負けないくらい頑張っているよ。 ボールを放り投げて跳ぶ。高く、高く――。まだこの想いには名前をつけたくない。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加