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私の想い
翌日。男子バレー部は練習試合のため隣町の高校に向かった。
女子バレー部は二面のコートでそれぞれ試合をしている。いつもは交代要員の私もずっと出っぱなしだ
「木村ー、サーブ、ガンバ!」
構える前に私はユニフォームのポケットに右手を入れた。中にあるものを撫でてから、手を出す。
落ち着いて、落ち着いて。呼吸をしてから、ボールを高く上げてジャンプ――。ボールの跳ねる音が体育館に響いた。
「ナイスサーブ!」
「いいぞ、木村!」
「こりゃあ明日の天気は荒れるね」
「木村、秘密の特訓でもしたのかよー」
先輩や同級生にやんやいわれて、ちょっぴり恥ずかしい。
ユニフォームのポケットには、昨日のペットボトルのキャップが入っている。
もう夏木がくれた熱は残っていないけれど、これを握りしめるたびに彼からパワーをもらっているような気がした。
明日私がサーブを決めたら、夏木はどんな顔をするんだろう。驚くかな。誉めてくれるかな。
夏木は私より大きくなって、どんどん強くなった。でも私、追いかけてもいいよね。
「木村、次も決めろよー!」
「はい!」
夏木も今頃、先輩方に同じ言葉をかけられているのかな。私もあなたに負けないくらい頑張っているよ。
ボールを放り投げて跳ぶ。高く、高く――。まだこの想いには名前をつけたくない。
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