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バレー部のあいつと私
まるでボールにじゃれつく猫みたい。
バレー部の練習中、つい私は隣のコートを見てしまう。
私が目で追っているのはひとりの男子。夏木康太だ。
彼は誰よりも素早くボールに反応してレシーブする。アタックの方向を予想できるかのように。
男子バレー部顧問の声が響いた。
「みんな、夏木に負けるなよ! 試合は明日なんだからな」
「ウィーッス!」
男子たちが一斉に返事をする。
夏木は無表情でポジションに戻っている。すごいな、プレッシャーを感じないのかな。
クラスでバレー部に所属しているのは彼と私しかいない。
私たちは顧問から言い渡された連絡事項を伝える仲だ。それ以外のコミュニケーションはほとんど取っていない。
夏木は、野球部の男子みたいに頭をスポーツ刈りにしている。
いつだったか、「何で、そんな短い頭をしているの?」と聞いたら、「汗をふきやすいから」と返ってきた。
夏木の頭のなかを脳内分析したら、『バレーボール』が九割九分占めているんだろうな。で、隅っこに『寝る』と『食べる』
髪型に凝らないし、眉毛もいじらない。夏木は中学の頃から全然変わらない。背丈を除いては。
中学のときは私より背が低かったくせに、タケノコのように伸びて私を追い越した。
ああ、私も中学からバレーボール部に入っていたら背が伸びたのかなあ。ダイエット目的でこの部に入ってきたけれど、お腹が空くからつい食べちゃう。
動いて食べていれば、プラスマイナスゼロだよなあ。まあ、健康的な高校生活なんだけれど。
「交代。木村、次、サーブだよー」
「はい」
部長に声をかけられて、コートに入った。ボールを構える。勢いよく打つ……が、ボールはネットに引っかかった。
「ドンマーイ!」
女子バレー部員たちの声があちこちから聞こえる。ああ、いつか「ナイスサーブ」といわれたい……。
私、木村花蓮が放つサーブは『嵐のサーブ』と呼ばれている。成功率が低すぎて決まった日がほとんどないからだ……。
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