優しさの味

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 その夜、お母さんとお父さんから、大事な話があると言われ、私たちは居間に集まった。 「お父さん、お母さん、大事な話ってなーに?」  まだ子供らしさの抜けない舌たらずな声でカノがきく。  その言葉によって、お父さんが話しはじめた。 「実はな、みんなに言っておかないといけないことがあるんだ。ほら、コウってもう十五になるだろ? 抜歯もしたし、もう立派な大人だ。だからな、もう、そろそろな、結婚させようかと思ってさ」 「「……」」  突然の告白に、私たちはとまどう。そして、少しの間、沈黙が流れた。  沈黙をやぶったのは、カノだった。 「……。ねぇ、それってもうコウには会えないってこと?」 「いや、会えないわけではないんだ。でも、コウは別の家の人になっちゃうんだ。俺たちとは一緒に住めない」  お父さんの返事を聞いて、カノは泣き出した。 「いやだっ! カノは、カノはコウと一緒に住むもん! コウと一緒に住むもん!!」  そう泣き出したカノに、みんななぐさめようとあたふたする。その中で、急にコウが口を開いた。 「カノ。よーく聞いて。僕は、みんなが安心してくらせるように、食べものがちゃんと食べられるようになってもらいたいの。たまに僕も会いに行くから。ね? だから泣かないで。ね」  そのコウの言葉に、カノは大きくうなずいて、 「……うん」  と言った。  その日カノは、コウと一緒に寝た。
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