優しさの味

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 五日ほど経って、コウは熱を出した。 「コウも本当は、結婚するの嫌なのかしら?」  なんていう話をしていたのをきいて、私は少し納得がいくところがあった。  それから四日ぐらいしてコウが回復した。  その日コウがお父さんとタツの持って帰ってきた食材で夕食を作ってくれた。  コウが作ってくれた夕ご飯はなぜだか分からないけど、久しぶりに味がした。 「ユカ、何で泣いているの?」  カノにきかれて、私は少しおどろく。  ほおに手をあてると、一筋の涙の通ったあとがあった。  カノの言葉でみんな心配そうに私の方を向く。  コウの顔が目に入ったとき、私はこらえきれなくなった感情といっしょに涙を一粒こぼす。  それがきっかけとなって、どんどんどんどん涙が出てくる。  私は声をあげて泣いた。  なんで?  私の心の中はその言葉でいっぱいだった。  コウの方が苦しいんじゃないの?  本当は、コウもこの家を出て行くのが嫌なんでしょ?  どんどんどんどん涙が出てくる。  ねぇ? なんで? なんで優しくするの? 「ユカ、どうしたの?」 ニオの声だ。 「ユカ? 何かあったの?」 カノの声だ。  そうだ泣きやまなくっちゃ。  でも……。  どんどんどんどんこぼれていく涙は、止まることを知らない。  私はいつのまにか、泣きながら寝てしまっていた。
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