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魔法の本
次の日の朝、菫はベッドから起き上がるとすぐに本棚の横にある壁に触って何かを確かめていました。
「う〜ん、やっぱりないなぁ。・・・・・夢でも見てたのかな。」
菫は、そう呟くと服を着替えて部屋を出て行きました。部屋を出るとすぐに父親に会いました。
「おはよう、パパ。今日は、お仕事ないの?」
菫は、不思議そうに父親に聞きました。父親は、しゃがみこむと菫と目線を合わせて嬉しそうに話し始めました。
「おはよう、菫。今日はね、お仕事お休みなんだ。菫、良かったら今日はパパと一緒に遊ばないかい?」
父親が、笑顔で話しかけると菫はすぐに嬉しそうに答えました。
「本当?お仕事お休みなの?それなら、パパと遊びたい!」
菫は、そう答えると父親に抱きついていました。
「うん、本当だよ。急にお休みになってね。菫と遊べることになったんだ♪」
「そうなんだ〜。それなら、僕が遊んであげる♪後で僕の部屋で遊ぼう!」
「フフッ、分かったよ。後でね。それなら、そのためにも朝ごはんにしよう。」
「うん。ごはん〜♪ごはん〜♪」
父親は、菫からの返事を聞くと菫の手を引いて歩き出しました。菫は、嬉しそうに歌いながら歩いていました。リビングにたどり着くと、母親が忙しそうに朝ごはんの支度をしていました。
「ママ、おはよう!」
「おはよう、蘭。」
二人が、母親にあいさつすると母親は手を止めて答えました。
「おはよう菫、柊。朝ごはんもうちょっと待ってね。もうすぐ終わるから。お弁当も一緒に作ってたら時間かかちゃって。後で作れば良かったかしら?それに、ちょっと起きるのも遅くなっちゃって。」
母親が、そうまくし立ててしゃべると父親が疑問を感じて問いかけてきました。
「蘭、お弁当って今日はいらないよ。・・・・?」
「・・・・え?」
「ママ、今日パパお休みだよ。」
菫は、母親の手を何度か引いて答えました。
「あら?フフフッ、やだわ。間違えちゃった。そういえば、昨日の夜聞いたわね。」
「はぁ、やれやれ。」
「もう〜、ママったらおっちょこちょいだな。」
父親は、呆れ顔で笑い、菫は母親の手を握ってからかっていました。母親は、安心したように笑っていました。
「フフッ、本当ね。じゃあ、ごはんにしましょう。ついでに作っちゃったお弁当も食べてね。」
「えっ、ヤッタ〜。」
「しょうがないなぁ。蘭、次から気をつけるんだよ。」
「ええ、ごめんなさいね。」
そして、三人はようやく朝ごはん食べ終わりそれぞれ片付けを始めたり、歯を磨いたりなどして朝の支度をし始めました。菫は、支度を終えるとすぐに部屋に戻りました。
「ふぅ〜、食べた食べた。」
菫は、ベッドの上で寝転がって休んでいました。
すると・・・。
コンコン。
ガチャッ。
「菫、お待たせ。」
父親が、ドアをノックして入ってきました。菫は、ゆっくりとベッドから起き上がると父親の方を見て言いました。
「パパ、大丈夫。そんなに待ってないよ。」
父親は、ニコニコしながら部屋に入って行きました。
パタン。
ドアを閉め、さっそく菫と話し込みました。
「菫、何して遊ぶんだい?」
父親が、そう問いかけると菫は昨日あったことを話し始めました。一生懸命話す息子が嬉しくて、すぐに息子の話しにあった地下への入り口を探し始めました。しかし、どんなにあちこちの壁や床、本棚に触れても何も起きませんでした。父親は、一旦あきらめて菫に視線を戻すと、最後に何があったかもう一度聞きました。
「菫、パパにもう一度昨日のことを教えてくれないか?最後のところだけでもいいから。」
「うん、分かった。最後は、ベッドに寝転がりながら“秘密の部屋の入り口よ閉じろCROOZ”って言ったら何もなくなってたんだ。」
父親は、少し考えると菫に自分が思いついたことを言いました。
「菫、その最後の言葉を“秘密の部屋の入り口よ開けOPEN”と言ってみてくれないか?なんとなく菫じゃないと開かない気がするからね。」
「うん、分かった。えっと、秘密の部屋の入り口よ開け“OPEN”」
ゴゴゴゴゴゴ。
気がつくと昨日と同じように入り口が出来ていました。父親も菫も驚いた表情で地下への入り口を見ていました。
「菫、・・・・開いたね。」
「・・・・うん。」
「この家にこんな仕掛けがあるなんて。」
父親は、入り口を睨み付けながら考えていました。そんな父親に菫は、先を促しました。
「パパ、早くいこう。」
「ああ、分かった。」
菫は、父親と共に昨日と同じように地下へと入って行きました。地下の部屋に入ると、菫はすぐに本棚に駆け寄りました。本棚から昨日最初に手に取った本を取り出すと、そのまま父親に手渡しました。父親は、本を開くと昨日の母親と同じように見ていました。
「・・・・?菫、ごめんね。パパには、読めないみたいだ。」
そう言うと、父親は菫に本を返しました。菫は、父親から受け取った本を開くと昨日とは違う変化がありました。
「・・・・あれ?」
菫は、何度も本を見直すと昨日と違い本が読めるようになっていました。
「魔法とは、心を原動力にして発動するものなり。」
「菫、もしかして読めるのかい?」
父親は、恐る恐る聞きました。菫は、強い意思でうなずいていました。
「うん、今度は読めるよ。」
「そうか。菫、この本は菫にしか読めないみたいだ。だから、菫が読んで教えてほしい。」
菫は、嬉しそうに笑っていました。
「うん、分かった。僕が、パパに読んであげるからね。」
「フフッ、楽しみだね。そうだ!今からこの部屋を捜索してみよう。」
父親は、いたずらっぽく言い放ちました。
「捜索?何探すの?」
「ん?もっと面白いものがないかだよ。この魔法の本のようなものがあるかもしれないよ。」
父親からそう聞いて、菫は面白そうな顔であちこち探し始めました。
「魔法の本かぁ。・・・・・パパ、僕も探す!」
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