22人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
邪魔が入ってしまったの。
元木くんの母親が、突然部屋に入ってきたのよ。
無遠慮な音とともにドアが開いて名前を呼ばれたものだから、元木くん、ぎょっとして手を滑らせてしまったわ。
せっかく丁寧に剥がしていた額の皮膚を、驚いた拍子で強引に鼻まで剥ぎ取ってしまったの。
肉のちぎれる感触がして、熱湯がかかったような鋭い衝撃が走った。
直後、顔がなんだかピリピリすると自覚してね、そのピリピリはすぐに激痛に変わっていった。
炎が燃え広がるようにすさまじい痛みが顔中に広がったの。
もうどこが頬でどこが額なのかも分からないくらい、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられた痛み以外の感覚がなくなった。
思わず痛みの源を手のひらで覆ったけど、触れるとさらに傷に塩を塗り込まれるような鋭い痛みが刺さって反射的に手を離す。
どうしようもなくただ悲鳴をあげることしかできなかったわ。
不思議よね、さっきまであんなに冷静に自分の顔を剥がしてたくせに急にわめきだすなんて。
時間が経ってクリームの効果が切れたのかしら。
もしくは彼の感覚を麻痺させていた興奮物質が驚いた拍子にすっと抜けて、現実の感覚に引き戻されてしまったのかもね。
元木くんはすぐに病院に運び込まれたわ。
一番怖かったのは彼の母親だったでしょうね。
夕食に呼んでも返事がないからって様子を見に行ったら、息子か血まみれで自分の顔を剥ぎ取って泣き叫んでるんだもの。
死ぬほど戸惑いながらもなんとか救急車を呼んで治療を受けさせてあげたの。
最初のコメントを投稿しよう!