次の話へ

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「それ痛い話じゃない!」  リョーコが口を閉じるや、ぞっとしたというように肩をすくめたミナが叫ぶ。  リョーコは意地悪くにやっと笑った。 「怖い話にもいろいろあるのよ。お化けの話、動物の話、人間の話、気持ち悪い話、悲しい話、それからもちろん痛い話もね」  今の話はどこに分類されるのか。  お化けは確かに出てこないけど、人間が怖いというよりは思い込みが恐ろしい話なのかもしれない。  ぼくにはエステっていうのがピンとこないからそこまでリアルに想像しなくて済んだけど。 「なんかやけに登場人物がリアルだったけど、モデルでもいるのか?」  セントの質問に、リョーコは白々しく瞬きして見せる。 「あら、元木君本人から聞いたのよ。名前は仮名だけど」 「またそういうこと言う」 「話に倉石さんって出てきたでしょ? あれ、実は私のことなの」  みんなが目を丸くしてリョーコに視線を集める。  確かにリョーコの肌はキレイかもしれないけど――  と、妙なことを考えたぼくがバカだった。  にんまり目を細めるリョーコの人の悪い笑顔は、冗談を言うときの顔だ。  もはや慣れっこになってしまっているが、この人の本気か冗談か分からない物言いこそ一番恐ろしいような気がする。  ミナとセントとぼくから咎める視線を突き刺されたリョーコは、ぷっと噴き出して両肩を上げた。 「冗談よ、ほんとは佐々塚さんが私のお母さんなの」 「はいはい」 「なんて、実は元木君が私のお兄ちゃんだったりしてね」 「わかったから」  身を乗り出して冗談を続けるリョーコを押し戻し、セントが咳払いする。 「僕も怖い話一つ思い出した。次、話していいだろ?」
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