リョーコの怖い話:キレイな肌

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リョーコの怖い話:キレイな肌

 これは、ある高校にいた、身なりにすごく気を遣ってる男の子の話。  名前は仮に、元木(もとき)君としましょうか。  元木君の家では親が美容師さんをしていて、彼自身も小さい頃からファッションや美容に興味を持って育ったみたい。男の子にしては珍しいタイプだったかもしれないけど、趣味を隠すようなことはなく堂々としてて、友達にもコーディネートのアドバイスをしてるような子だったわ。まあ、アドバイスを求められてのたかどうかは知らないけどね。  ファッションセンスには自信のあった元木君だけど、見た目に関して一つだけコンプレックスがあったの。  高校生になって、顔にニキビが目立つようになってきてしまったのよ。ニキビができるのは思春期の性なんだから仕方ないといえばそうなんだけど、外見を重視する彼の価値観にとっては耐えがたいことだったのね。  それでね、彼、ニキビを気にしてるっていうことだけはなぜか他人に言えなかったの。  ファッションには自信があったから堂々とすることができてたんだけど、自信があるってことはプライドが高いってことでもあるのよね。コンプレックスをさらけだして平気なほど無邪気な質じゃなかった。  だから元木君は親や友達には相談せず、自分でいろんなスキンケアの方法や商品を調べて、かたっぱしから試したわ。化粧品に頼るばかりじゃなくて、ちゃんと食生活や睡眠時間にも気を遣ってたのよ。脂っこいものは避けて、夜は早く寝て朝はきちんと太陽を浴びる。やけに規則正しい生活になって、親からも感心されてたみたいよ。  ただ、努力してる本当の理由は誰にも言わなかったの。友達と買い食いするときにはお金がないとか言って自分だけ買わなかったり、母親が作ってくれたトンカツをダイエットしてるとか言って食べなかったり。  変な話よねえ。本当のコンプレックスはプライドが邪魔して言えないけど、嘘の弱みなら堂々と口にできるのよ。  お金がない、なんて言ってケチだと思われたり、ダイエットしてる、なんて言って体形を気にしてると思われることは別にかまわないのね。自意識過剰な人って複雑な心理をしてるわ。  様々な手段を試した元木君だけど、ニキビは一向に治ってくれなかった。  むしろ、違う成分のスキンケア製品をあれこれ混ぜてしまったのが悪かったのか、どんどん数が増えて治りにくくなっていくみたいに思えた。  でも彼の努力は報われたわ。本当に効果のある対策を見つけることができたの。
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