次の話へ

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 セントが話し終わったとたん、リョーコが自分のスマホを取り出すと目をキラキラさせてミナの隣に迫った。  ミナは予想していたというようにすばやく立ち上がって反対側の椅子に座りなおす。 「試してみよう系の話はやめてよ! 誰かさんがやろうって言いだすに決まってるじゃない」  文句をつけるミナに、セントは頭を掻いて「確かに。ごめん」と素直に謝った。  ミナもさっきは痛い系の話は嫌だって言ってたし、注文の多いことだ。 「なんかいい話だね」  穏やかに聞いていたクダにさらりと褒められて、セントは肩をすくめる。 「そうか? ただの思い込みで済む話だし、あんま怖くないだろ」 「余韻がいいと思う。井上がその後どうなったのかってのももちろんだけど、自分も知らないうちに誰かに鬼を回されてるかもしれないっていう含みがあるだろ」  本ばっかり読んでるクダが言うとなんとなく説得力がある。  それに、ちゃんと聞いてたんだって感じだ。ぼくはスマホの話かと思って聞いてたら途中からスマホが出てこなくなったから、集中力が途切れてしまった。 「だるまさんがころんだ」  ぎょっとして顔をあげると、リョーコがスマホをかかげて目を閉じている。  ミナに逃げられたから自分で試すことにしたんだろう。相変わらず無駄な行動力がある。 「やめてよ! 結果見せないで!」  耳を押さえるミナに不敵に笑いかけたリョーコはスマホをじっと見つめ、すぐにつまらなそうに目を細めた。 「残念、スポーツ協会が出てきたわ」  それからセントにスマホを渡してくる。 「はい、セントの番」 「僕はもうやったって言ったろ」 「じゃあコジ、はい」  スマホを渡され、反応に困る。  正直、こういう話は信じてしまうタイプなのだ。ありえないと分かっていても怖いものは怖い。それとこれは別。 「いりません」  丁重に押し返したら、眉を上げたリョーコに「ひょっとして怖い?」と挑発される。  手振りでノーコメントを示すぼくに、リョーコは反応を引き出そうとしてか追い打ちをかけてきた。 「シンもこういうの信じちゃいそうよね。すごく怖がりそう。後でドッキリしかけてみようかしら」 「信じるだろうけど、どうせすぐ忘れるよ。だからこういうじわじわ系のは効果ない」  確かに、素直なシンはびびりなところもある。  怖がらせてやろうとして怪談やら都市伝説やらビックリ動画やらを試したこともあるが、そのときは死ぬほど怖がったとしても、三歩歩けばけろりとするからまるでおもしろくない。後に引きずらないのだ。  つい双子の習性を解説してしまったぼくは、にんまりしているリョーコの顔を見ないようにしながら「次誰が話す?」と話題を変える。 「俺が話そうかな」 「ダメ、あたし」  最初に声を上げたクダをミナが遮った。  ミナはなんだか知らないがクダに対抗意識を持っているのだ。  いかにも女子って感じの派手なミナと、頭がよくてイケメンだけど控えめなクダはタイプが違うことは確かだけど、ミナがなんでいちいちクダにつっかかるんだかよく分からない。  実は好きってことなのか。ミナも嘘のつけないたちだからそうは思えないんだけど、恋愛女子ってそんなものなのかもしれない。  クダは黙って肩をすくめて譲るという意思を示す。  ミナはそんなクダを仏頂面でにらみつけてから、話を始めた。
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