第一章

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第一章

 四月、新年度が始まり、ほとんど全ての部活動や同好会が多くの新入生で賑わうなか、紅村(こうむら)真愛(まい)は部室である家庭科室で一人椅子に座っていた。 (はあ……、誰も来ないな……)  真愛はため息をついた。 (うちは部活として認定されてないから、勧誘もできないし、入学式で紹介はしたけど、私一人しかいないから印象薄かっただろうな……)  そのようなことを考えながら、一人部室でぼーっとしていると、 「あの……、すみません」 不意に入り口の方から声が聞こえた。 「へっ? あっ、は、はい!」  どうせ誰も来ないだろうと完全に油断していた真愛は、突然のことに驚き間抜けな声を出してしまった。  真愛が声のした方に目を向けると、少し気の弱そうな少年が入口の前に立っていた。 「ここって、料理同好会で、あってますか?」  少年は、その場に立ったまま、遠慮がちに尋ねてきた。 「はい、そうですけど……。あっ! もしかして、新入生?」  真愛は突然訪ねてきた少年が新入生だとみて、目を輝かせて言った。 「見学? 入会希望? まあ、どっちでもいいか。とりあえず座って」  真愛は、新入生と思われる少年に座るよう促す。 「あ、失礼します」  少年は、やはり遠慮がちに家庭科室へと足を踏み入れ、入口近くの椅子に座る。 「それで、見学かな? それとも入会希望?」  真愛は少年の近くの椅子に座り尋ねる。 「あ、えっと、入会希望です」  少年は答える。 「え? 本当!? じゃあ、入会届持ってくるから、ちょっと待っててね」  真愛はそう言って、入会届を取りに行った。 「じゃあ、ここに名前と、学年とクラス、あと連絡先を書いてね」  真愛は満面の笑みで少年にそう言った。 「はい」  少年は真愛から入会届を受け取り、名前、学年とクラス、連絡先を記入し真愛に手渡す 「えーっと、小林……(さとし)君でいいのかな? あっ、自己紹介まだだったよね? 私は紅村真愛、料理同好会の会長。これからよろしくね」  真愛はそう言ってから、 「とは言っても、まだ私と君しかいないんだけどね」 と付け加えた。
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