第一章

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 料理同好会の活動初日、真愛と智は食材の買い出しに出かけていた。 「でも小林くんがうちに入ってくれて本当に助かったよ」  買い出しの帰り、真愛は不意に話し出した。 「うちってこれまで男子がいなかったから、買い出しとかで重い荷物がある時は大変だったんだよね。だから、君のことはけっこう頼りにしてるんだよ」  真愛からの思いがけない言葉に、智は少しつまりながらも返事をする。 「は、はいっ! ありがとうございます」  智が料理同好会に入ってからしばらく経ったある日、彼は真愛に対してある質問をした。 「紅村先輩、料理同好会って前からこんなに人数少なかったんですか?」  突然の質問に真愛は少し驚いたような表情を見せる。 「どうしたの? 急に」  智は質問の理由を真愛に説明する。 「いえ、うちって二年生のメンバーがいないじゃないですか。だから、前から人数少なかったのかなって思って」  真愛はその説明に納得したように頷き答える。 「あぁ、なるほど。えっとね、うちって私の二つ上の先輩が一年生の時に創ったらしいんだけど、私が入った頃は全員で七人だったかな。けっこう活気あったよ」  真愛の答えに、智はさらに質問を続ける。 「そうだったんですか。じゃあ、その頃は小山先生ももっと活動に熱心だったんですか?」  真愛は首を横に振りながら智からの質問に答える。 「ううん、あの人は私が入部した頃にはもうあんな感じだったよ。先輩の話だとはじめからあんな感じで、冷蔵庫使わせてもらえるように申請書にサイン貰いに行ったら秒で貰えたらしいしね」  こうして二人きりの同好会活動をしていくうちに、当然の流れとして真愛と智はいつしかお互いを名前で呼び合うようになり、二人は恋人同士となった。  十二月二十四日、クリスマスイブ、街にはイルミネーションが煌めきカップルで溢れかえる頃、真愛と智は真愛の家にいた。 「ねえ、智くん。智くんは、私のこと愛してる?」  真愛は智に寄り添いながらそう問いかける。 「今さら何言ってるんですか? 真愛さん、愛してるに決まってるじゃないですか。そういう真愛さんは?」  智も真愛に同じことを問いかけた。 「もちろん、愛してる。だからね、智くん、一つになろう?」  そう言うと真愛は智を押し倒し、自分の首からネックレスを外した。そしてそのネックレスで、智の首を絞めた。
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