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もともとは、この地元のお祭も、けっしてこんなにもどこからか多くのお客さんが集まるお祭ではなかったって、おじいちゃんが言っていたな。
もともと旧暦の神無月の初めごろにやっていたこのカミオクリ祭は、新暦になると十月の末日に定着したんだって。
俗説なんだけど、神無月には神さまたちは出雲(現在の島根県あたり)にお出かけしちゃうって話が多くの人に信じられていたので、この地域のカミオクリ祭は、神さまを出雲へとお見送りするお祭なんだ。でも、もともとおみこしもかつがないし、おはやしもしないで、ただぼんおどりみたいなふしぎな舞いを、すこしおごそかに行うっていう、地味な祭だったんだ。
けれどもここ五年あたりで、いきなりハデな仮装をした子どもたちが増えた。
ぼくたち村人は、昔からそのどこからともなく現れる子どもたちに、おまんじゅうやこんぺいとうを差し上げていたんだけど、最近はチョコレートやキャンディーを欲しがる子どもたちが多くなったな。ぼくはおまんじゅうやこんぺいとうのほうが好きだけどね。
さらに、何年かに一度だけど、大きな怪獣のようなつくりものが現れて、その中から美しい音楽が流れてくるんだ。それに合わせて、仮装したちっちゃな子たちは、踊りをより激しく美しく舞うようになっている。
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