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少し遠くにいた兵が嗤いながら、こちらの兵に寄ってくる。
「お前ら、井戸に何入れた?」
俺が思わず呟けば、兵が汚物を見る目でこちらを見下ろす。
「洗浄剤だよ。この区画を作り替える事になったから、ゴミを綺麗に片付ける必要があったからな。お前もすぐにこうなる」
「何、このガキ。何で倒れねぇの」
俺は胸を抑えた。
胸に焼ける様な痛みと熱さが湧き上がってくる。
だが、喉を血はこみ上げてこない。
スープも水も飲まなかったからだろう。だが、口に含んだだけでも激痛がもたらされる。
こんな痛みを伴うなら、すぐに死ねた方が良かった……
なんて俺は一切思わなかった。
俺が血を吐いて死ぬのを大笑いしながら楽しみに見ていた兵たちに、一矢報いずに死ぬつもりなど毛頭ない。
いや、一矢報いた所で、そもそもこんな所でこのまま死ぬつもりなんかない。
大口を開けて嗤う彼らの口元目掛けて、桶に入った水をぶち撒ける。
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