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「何すんだ!てめぇ!」
「まずい!今の井戸水だ!俺飲んじまった!」
慌てふためく兵たちを置いて、俺は町の大通りを目指して駆け出す。
非民の子を誰も助けてくれないかもしれない。
だけど、気狂いな人間でも良いから拾ってくれれば、現状から抜け出せる。
遺体の山と血でぬかるんだ地面は走りづらい。
そのせいだけじゃない。
足が思う様に動かない。胸が痛い。頭がクラクラする。
ゲホッと咳き込むと、口の中に血の味が広がる。
即死じゃなくても、徐々に蝕まれている。
あと少しで非民の区画を抜ける所で、気が緩んだのか足を滑らせ顔を地面に打ち付けた。
また咳き込めば、今度こそ血が吐き出される。
ゼーゼーと息は切れ、脂汗で髪や泥がへばりついてくるのも気にせず、それでも前に進もうと顔を上げると、目の前にいつの間にか誰かの足があった。
兵の足ではない。服が違う。
こいつは俺を助けられるのか。
見定めようと顔を上げれば、そこにいた男は俺と目が合うや否やポロポロと涙を流す。
そしてしゃがむと俺の顔を持ち上げた。
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