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次に目を開けた時、俺は路地にいた。あの男はいない。
路地の片方は大通りに繋がり、もう片方は非民区画に繋がっているが、そこには何もない。
全て燃やされたのだろう。
近づけば、地面には血の跡と灰だけが残されていた。
「足掻いて楽しませろ」なんて言われたが、大して足掻く事は無かった。
時間にも行動にも制限がなくなって、人目を盗んで水場で身体を綺麗にし、その辺の服を盗む。
見た目さえキチンとしてしまえば、大通りを歩いても目をつけられない。
右手の甲も始めは大きな服を着て袖で隠していたが、怪我には包帯をする事を知り、包帯を巻いて怪我を装う事にした。
食糧を手に入れるのも大した事はない。
非民区画では争奪戦だったが、街中には虫やネズミが溢れていて食べ放題だ。
人々の話にはできるだけ耳を澄ませて聞いた。
情報と知識が詰まっている。
非民区画の虐殺は疫病で片付けられていた。
非民は全滅したと言われ、平地にされたその区画には、前よりはまだマシな家が建てられ、今度は貧困層が追いやられているらしい。
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