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「ねぇ、君、私の元で働いてくれないか?」
非民区画が無くなってから半年も経っていない頃。そう声を掛けられたのは路地裏で分け前を与えた奴らが居なくなってからだった。
声の主は自分と対して変わらない歳の少年。服装も雰囲気もただの町の子どもじゃない。
「働くって何すんの?」
「弟の親友になって欲しい」
俺は思わず笑ってしまい、かじっていたリンゴを危うく落とし掛けた。
「あんたの弟は、兄貴に見繕ってもらわなきゃ友達もできないのか?」
「ああ。俺たちの世界だけでは表面上の友人しかできない」
「報酬は?」
「望む物、何でも。ただし、出来高に応じてだ」
リンゴを芯まで食べ切ってから、俺は少年に顔を向ける。そろそろ盗みも潮時だし、良い機会だった。
「何?弟さんにヘコヘコすれば良いの?」
「そんなのは既にいる。欲しいのは圧倒的に低い身分で、対等な人間だ」
「何しても良い?」
「大きな害が無ければ」
「面白そうじゃん。あんた貴族だろ?家に料理人いるか?俺、いろんな食べ物を知りたい。あと本って言ったっけ?それを読めるようになりたい。それに毒物だ。毒物の知識を得られるか?」
「容易だな」
「引き受けた。俺はピーターだ」
「私はバーレン。弟は……」
「それは本人に聞く。家、教えろよ」
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