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乗客の間に戦慄が走った。鬼に選ばれれば、一言も口をきくことができなくなる。口をきけば、自分以外の誰かが殺されてしまう。また、鬼に選ばれなければ、自分が殺されてしまうかもしれないのだ。
「さあ、鬼は誰にするかな」男は車内を見渡した。車内に緊張感が漂った。皆、男と目を合わせないようにした。
「よし、お前だ」男は、ドアの近くに座っていた中年の男性に銃口を向けた。
「な、何を言っているんだ。やめろ」男性は驚いて言った。
「うるさい。もう決まったんだ。さあ、始めるぞ。用意、スタート!」
「ちょっと待て!」
次の瞬間、車内に銃声が鳴り響いた。鬼になった男性の後ろに座っていた別の男性が撃たれたのだ。
再び車内に悲鳴が響いた。乗客はパニックになった。
「おい、わかっているか、お前がしゃべったからこの男は撃たれたんだぜ」男は鬼になった男性に向かって言った。
鬼の男性は思わず口に手を当てた。自分が口をきくと他の乗客が殺されてしまう。男性は言葉を発しないようにした。
車内にただならぬ緊張感が走った。特に、撃たれた男性の後ろに座っている女性は、次は自分の番だとわかっているのか、青ざめた表情になっている。他の乗客も落ち着かない様子だ。運転手は平静を装って運転している。
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