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顔色が悪いドゥール侯爵と、怒りで血色が良く見える侯爵夫人。その2人が居なくなって、はぁ……と一息ついたところで、ブレング伯爵家の従僕が手紙を持って来た、とリラから渡された。
「ソフィー様からだわ」
「その手紙の返事を至急頂きたい、との事でブレング家の使いは待っております」
まさかの急ぎである。なんだろう? と封を開けて目を走らせた。
「まぁ」
「どうなさいました?」
「夜会が急遽取り止めになったそうなの。それでブレング伯爵家のお庭でお茶会をする事になったそうよ」
「夜会が? いきなり取り止めでございますか?」
リラも声を上げる。それはそうだ。夜会を開催する。簡単に行く事では無い。何しろ準備が恐ろしく時間がかかるし、ある程度準備を進めながら、招待客を吟味する。もちろん、招いても欠席の人もいるだろうから、返信は遅くとも1ヶ月前まで。そこから人数に合わせて飲み物の手配やら食事の手配やら行うのだ。
更に伯爵位以上の貴族を招くのであれば、生演奏でダンスは必然。伯爵位以下の貴族の場合は、生演奏まで必要とは言えないが。とはいえ、ブレング伯爵家は、下位貴族も上位貴族も招く実力のある家だから、生演奏の手配もしていたはずだ。我がバントレー伯爵家だって、実力もお金もそれなりにあるけれど、ブレング伯爵家と比べると落ちる。
別に私はそれを気にした事は無いし、ソフィー様もその辺は気にしていない。1歳違いとはいえ、気のおけない友人だという自負はある。まぁそんなブレング伯爵家が大々的に夜会をやりますよ! と言っていたのが取り止めになりました。なんて、何かあった、と言っているようなものだった。
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