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「ルイーザ・バントレー。君との婚約は破棄させてもらう」
久しぶりに会う婚約者に、挨拶もそこそこにこんな事を言われるなんて、思ってもみなかった。
「どういう事、でしょう?」
私は首を捻る。バントレー伯爵家長女である私と、お相手のドゥール侯爵家次男であるエミリオ様との婚約は、私が8歳。エミリオ様が10歳の時に、親同士が決めたものである。
貴族の結婚なんて、家同士の結婚なのだから、破棄する方も、される方も、家の恥になるのだが。
「そのままの意味だ」
「そうなのかもしれませんが、理由をお伺いしておりますの」
ドヤ顔のエミリオ様に、扇で顔を隠しつつ、溜息をつく。エミリオ様の家は騎士を多く輩出しているのだが、エミリオ様も例に漏れず、騎士団に所属している。10歳から学院に通い、15歳で卒業するまで、勉学と基礎体力作りに励む貴族の男子。エミリオ様もそうだったのだが、勉学はあまりお出来にならなかった、と父から聞いている。
それはともかく。学院を卒業して、騎士団に入り、頭角を表して2年目のエミリオ様。今年、社交界にデビューした私を待って、来年には結婚式を挙げる予定になっている。というのに、いきなり理由もなく、婚約破棄とは、どういう意味なのか。
そこを知りたい。
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