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「知らないのか? 国内の流行の最先端は、“婚約破棄”なんだ」
更なるドヤ顔。……うん、馬鹿だ馬鹿だとは思っていたけど、ここまでとは思わなかった。流行の最先端が婚約破棄だから、自分達も婚約破棄をする、と?
「それは存じ上げませんでした」
私が素直に知らない、と言えば、胸を張って偉ぶった。
「遅れているなぁ。ルイーザは」
「そうですわね。エミリオ様は良くご存知でしたわね?」
私が褒めれば、調子に乗ったエミリオ様が話し始めた。
「うむ。遠国のフレーティア王国で、テーランス公爵という方が居てな?」
「……はぁ」
「それはそれは女性にモテるそうなのだが、この度、王命によってご結婚された、とか」
……はぁ。話が見えない。私は相槌を打つのもやめて、頷くだけにしておく。どうせ、こういう時のエミリオ様は、勝手に喋る。
「その際、テーランス公爵の結婚を残念がる未婚の女性達が結婚式に乗り込んだ、とかで、あわやご破談になるところだったが、その妻になった方が美しいだけじゃなく、聡明で、そこまでモテるテーランス公爵と結婚出来る事を誇りに思ったらしく、許されたそうだ」
ん? ……その話、どこかで聞いたわねぇ。しかも私が知る話とは、全く違う実状だったような……。
「それを聞いた我が国の男達は、親同士が決めた婚約ではなく、王命による結婚なら、そういう素晴らしい女性を娶る事が出来るんじゃないか、と思う者が現れてな。そこから王命で結婚を決めてもらうために、婚約破棄をする者が現れたんだ。そして現在では、流行の最先端が婚約破棄だ」
……ああ、うん。馬鹿ね。エミリオ様だけじゃなく、他の男達も馬鹿だわ。
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