婚約破棄だそうで

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 「成る程。それで、私達も、という事でございますか」  「そうだ」  「承りました」  別にエミリオ様の事を愛してるだの恋しいだのと思っていないので、あっさり承諾した。  「ルイーザ、君も俺と婚約破棄をして辛いと思うが」  「いいえ、全く。それよりもドゥール侯爵子息様。今、この時より、私、ルイーザ・バントレーとエミリオ・ドゥール様の婚約は破棄されたので、名を呼ぶのはお止めになって下さいませ」  なんだか悲劇の主人公的な事を言い出したエミリオ様の言葉をぶった切って、私は笑顔で言ってのけた。  「あ、ああ」  「それでは、ご機嫌よう。私の方から父には話しておきますので、ドゥール侯爵子息様も、お父君にお話下さいませ」  そこまで言うと、我がバントレー伯爵家のサロンにまだ居るエミリオ様を、同席していた執事と侍女に目線で促して追い出した。  「あー疲れた」  「お嬢様、はしたない」  「あら、エド。私はソファーに座っただけよ」  さっさと追い出して戻ってきた執事が溜息をつくので、私は眉間に皺を作る。まぁ確かに、ボスンッと音がする程、思いきり座ったから、はしたないと言えばはしたないのかもしれないけど。  「お嬢様」  「はいはい。淑女にあるまじき行為だったわね。でも許してよ、これくらい。私、婚約破棄されたのよ?」  「落ち込んでるようには見えませんがね」  エドの指摘には声を立てずに笑っておく。……何しろ、これでお守りから解放されたのだ。婚約破棄されて悲しい? とんでもない。こんな喜ばしい事なんて他に無い。エミリオ様と話す事が、苦痛の日々だったのだから。  何しろ、話題と言えば、自分自慢か騎士団の団員か。というくらいで、とてもつまらない。話のつまらない男の相手は苦痛でしか無いのだから。これで、晴れてエミリオ様のお相手はしなくていい!  晴れやかな気持ちで、私は自室に戻った。
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