婚約破棄だそうで

6/10
676人が本棚に入れています
本棚に追加
/149ページ
 先頃無事に社交界デビューを果たした私は、昨年、社交界デビューを果たされた同じ伯爵位のご令嬢のソフィー・ブレング様の邸で行われる夜会に決めた。……さすがにねぇ。公爵位の方達が、私と同じ目に遭われている、なんて思わないし、エミリオ様の話が本当だったら、侯爵位の方達なら有り得るかもしれないけど、爵位が上のご令嬢方に、婚約破棄されました? なんて聞けるわけが無いし。  それなら、先輩令嬢にあたるけど、昔から何でも話し合って来たソフィー様には、直接聞けるし、ね。ヨシ! この夜会をお受けしましょう!  ということで。参加の旨を記した手紙に、婚約破棄をされたので、エスコートはエミリオ様では無く、私のお兄様がする旨も記しておく。……エスコート無しに夜会に行くのは、マナー違反というより、恥ずかしいものね。婚約していない令嬢は、父親か男兄弟にエスコートを頼むのが通例なんだし。  「リラ。お兄様に、ソフィー様の邸で行われる夜会に参加するから、エスコートをお願いします。って伝えてくれる」  「畏まりました」  「婚約破棄の件も話しておいてね」  私付の優秀な侍女は、頭を下げて部屋を出て行った。もちろん、私が認めた夜会参加の旨を記した手紙を持って。きっと従僕に託してくれるだろう。  「さて。私は、キリルへの手紙を書かないと。ついでに我が国では婚約破棄が流行しているらしいわ、とも書いておきましょ」  婚約破棄をされて、傷心。……なんて可愛げが無い私は、話のつまらないエミリオ様のお守りをしなくて良い事に機嫌が良くて、この後の嵐を予想する思考を持っていなかった。  そう。婚約破棄をしてきたエミリオ様のご両親が、先触れも出さずに我が邸にやって来るなんて嵐を……。
/149ページ

最初のコメントを投稿しよう!