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その日の夜。帰宅されたお父様に、日中の一件を事細かく話した。エミリオ様が仰っていた事も含めて。
「爵位こそ上だが、ドゥール侯爵家は、侯爵家としては斜陽だというのに、随分我がバントレー伯爵家を馬鹿にしてくれたな」
あ。お父様、お怒りね。お父様は私の事をそれなりに愛してくれている。けれど、こういう時に出る言葉で分かる。私を娘として愛している、というより、自分の都合の良い駒として愛している存在だ、という事を。
まぁそれも仕方ないと思う。
我が国……その他の国もおそらく、だけど。基本的に長男が跡を継ぐ。跡取りに何かあったら、という事で次男も邸に残る事が通例。大概、無事に長男が跡を継いで、次男はそのサポートに回る。三男以降は何処かの家に婿入りだ。
それに対して娘は、男が生まれなかった家では、娘が婿を取って跡を継ぐけれど、我が家みたいに兄も弟も居る娘は、嫁ぐのみ。その嫁ぎ先は、家に利を運ぶ相手である。
我が家の場合、伯爵領がそれなりに潤っているから、私の持参金はそれなりに多くなる。だから、ソレ目当てで縁談を申し込んできた家は多いはず。その中で、お父様が我が家に利を運ぶ家を選んで決めたのが、エミリオ様のご実家であるドゥール侯爵家なのだ。
つまり。お父様が言いたいことは。
我が可愛い娘との結婚が気に入らないだと⁉︎
という気持ちではなく。
我が家の持参金が目当ての家計が火の車である侯爵家が、良くも我が家を侮辱してくれたな⁉︎ あと、我が娘の事も馬鹿にするとは、許せん!
という気持ちであるということ。まぁ、典型的な貴族の父と言ってしまえば、それまでね。
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