エミリオ様の借金騒動

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 「つくづくエミリオ様に恋などしていなくて良かったですわぁ」  心底感謝する。  「ルイーザがそう思うならそれで良かったのかもね。お兄様としてもあんなアホが義弟(おとうと)にならなくてホッとしたよ」  お兄様……。無駄にキラキラした笑顔で何気に酷い事を仰せですわよ? 確かにエミリオ様はおバカ……いえ、アホ……じゃなくて、少々思考能力が劣っていらっしゃいますが。  あら? 私もなかなかに酷いかしら?  「まぁ我がバントレー家としては、縁が切れて良かった案件ですわね」  取り繕っても仕方ないので、私は本音を吐き出す。幼馴染みの誼で面倒を見てきたが、何故侯爵家の令息だというのにこんなアホ……じゃなかったバカ……でもなくて、思考能力が劣っていらっしゃるのか疑問だったのですわ。  「ルイーザ。本当に疲れ切っていたんだね。だから早めに婚約を破棄するか解消するか白紙にしようと言ったじゃないか」  「そうは仰いましても。お兄様もご存知のように“破棄”では、こちらの有責になってしまいますわ」  そう。契約なのだから破棄される側に余程の瑕疵が無い限り、此方の有責になってしまい違約金が発生してしまう。違約金の上に慰謝料まで請求されたら目も当てられない。  「エミリオが不貞を働いていたのだから此方の有責にはならなかっただろう」  「お兄様はそう仰いますが、抑、私はエミリオ様が不貞を働くなどと思ってもいませんでしたわ」  本当に。全く。これっぽっちも。  エミリオ様が他の女性とお付き合いしているなんて考えてもみなかった。恋愛感情は無かったものの、親愛の情はあった。結婚したら溜息をつきながらも面倒を見ていくつもりの感情くらいは、あった。だけどそれを台無しにしたのはエミリオ様ご自身。  それどころか恋人が居るなんて思いもよらなかった。思い付きもしなかった。エミリオ様に擦り寄る女性がいるなんて思ってもみなかった。だってエミリオ様だから。  でもまぁ、あんなエミリオ様でも見目は良い方だから、その見目だけで判断して近寄る女性もいるのかもしれない。それでも話せばその残念さは、理解出来るとも思っていた。だから余計に気付かなかったのかもしれないですわ。  エミリオ様に限って浮気などするわけがない。  そんな先入観が働いていました。……まぁ真相を知っても、私の胸の裡は「まぁ! エミリオ様でも言い寄る女性はいらっしゃるのね!」という程度の気持ちしか無いですけれど。
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