【番外編】ガラスの靴を叩き割りたい!

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男性対して、“キレイ”と形容することに違和感を感じるかもしれないが、この佐伯(さえき)広視(ひろみ)という男を評するにあたり、その言葉以上にぴったりな表現を、岩崎(いわさき)世奈(せな)は思いつくことはできない。 面接のとき、なんて顔面偏差値の高い美容院(サロン)なのかと思ったもんなー。 男ふたりの会話を、聞くでもなく聞いていた世奈は、ふと自分が入社したときのことを思い出す。 『May』は、社長の浅賀(あさが)が、夏野、佐伯の三人で立ち上げた美容院(サロン)だ。縁あって、二店舗目となる大宮店のオープニングスタッフとして採用された世奈は、当時の店長だった佐伯に色々と世話になった。 その彼が、美容師を辞めてシステムエンジニアになると聞いたときは耳を疑った。あまりにも畑違いの業界への転職に、「少ししたら、のではないか」とさえ思った。 もっとも、そんなことは実現することもなく、“中野店の客のひとり”としてやってくる佐伯を、マネージャーが自らがカットを担当しているのだった。
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