【番外編】ガラスの靴を叩き割りたい!

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それにしても、佐伯(さえき)さんなら、どんな女でも選びたい放題だろうに……。 ブローの合間に、断片的に耳に入ってきた情報を総括すると、まったく“女子力”の欠片(かけら)もない女に、佐伯が心惹かれているというのだ。 通勤途中の電車で、毎朝見かけるという、しかめ(づら)疲れ顔の名前も知らない女。 アオハルなシチュエーションにも関わらず、パッサパサの“干物女”だということは容易に想像できる。唐揚げ食べたらムネ肉だったぐらいしょんぼりな話だ。だれがなんと言おうと、唐揚げはジューシーなモモ肉だ。 さて、新宿からたった一駅という短い区間に眠りに落ちる彼女を、“中央線爆睡おねーさん”と、マネージャーの夏野(なつの)が適当に命名する。 センスがまったく感じられないが、「“中央線爆睡おねーさん”に、あんなに見た目も性格もいい佐伯さんはもったいないよな」と世奈は佐伯を一瞥(いちべつ)する。 だが、すぐさま視線を逸らした。 恋をしている男というのは、存外わかりやすいものらしい。
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