【番外編】ガラスの靴を叩き割りたい!

5/156
前へ
/382ページ
次へ
自分もなのだろうか……? 「お疲れさまでしたー」 動揺などにも出さず、世奈(せな)はスタイリングを終えたばかりの女性に、鏡越しにウインクをする。 「やっぱり、ばっさり切ってよかったですね」 すごく似合ってますよ、とニッコリと笑えば、短くなった毛先に触れながら、女性が照れたように笑った。 気分を変えたいと、背中まで伸びた髪をショートにし、髪色を少し明るめのアッシュグレーにした彼女。左手の薬指から、華奢(きゃしゃ)なデザインのファッションリングが消えていることに気づいた世奈だが、もちろんそれに言及(げんきゅう)することはない。 古くなったなにかを切り捨てるように、軽やかな足取りで店を後にする彼女を見送って、世奈は息を吐いた。 失恋をすると、一定数の女性は髪を切りたくなるのだろうか。
/382ページ

最初のコメントを投稿しよう!

731人が本棚に入れています
本棚に追加