魔法使いの押しが強すぎる

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なぜ、そうなってしまったのか。正直、(あまね)自身もよくわからない。 あれよあれよという間に、連絡先を交換することになり、次回のヘアトリートメントの予約も入れてしまったのだった。 さらには、『足、痛いでしょ?』とパンプスを()ぎ取られ、彼の私物だというスニーカーを()かされて帰宅する羽目になるとは。 「昨日の迂闊(うかつ)な自分が憎い……!」 ここが自室ならば、顔を(おお)ってゴロゴロと左右にローリングする勢いだ。もちろん、ここは職場なので自重する。動揺してはいるが、そこまで理性を失ってはいない。 なお、(くだん)のスニーカーは、帰宅して早々、クローゼットに隠すように押し込んだ。 彼氏のいない地味な長女が、男物の靴を()いて帰ってきたことが知られれば、家族は大騒ぎするに違いない。特に、妹からの容赦(ようしゃ)ない尋問は避けられないだろう。想像するだけで、(あまね)は気が滅入った。 しかも、問題はそれだけでは終わらない……!
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