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「鴛尾さん、なに暴れてるの?」
怪訝そうな顔つきで庫内をのぞき込んだのは、直属の上司の市川課長だ。
胃痛持ちらしく、彼の顔面は今日も安定の青白さ。ヒョロ高い背と、吹けば折れそうな細く長い華奢な手足から、“死神”などと揶揄されていることなど、彼はきっと知らない。
「あ、暴れてませんよ」
動揺する周を一瞥し、市川はやれやれと息を吐いた。
「……森埜常務が、君を探していたよ」
「常務がですか?」
先日頼まれて作成した資料に不備があったのかしら、と周は首を傾げながら執務室へと戻る。
“社内のなんでも屋”は、なにかと忙しいのだ。
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