720人が本棚に入れています
本棚に追加
/382ページ
七月初旬。
差し込む光は、もうすっかり夏のそれだ。日傘の下から太陽を仰ぎ見た周は大きく息を吐いた。
イエローのフレアスカートがふわりと揺れる。一方で、足取りはひどく重い。
自宅から歩いて二十分。
再び訪れることになった美容院『May 中野店』は、もう目の前だ。
ほんと、憂鬱だわ……。
男のスニーカーが入った紙袋を一瞥し、本日何度目かわからないため息をついた。
それに合わせるように、大振りなイヤリングがカチャカチャと音を立てる。それがまた、周を鬱々たる気持ちにさせたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!