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桜が一本あって、
崖の下に町は広がり、
少女は佇んでいる。
日の反射が家々の屋根を飾り、
舞い散る花弁は少女を包むように、
淡く彩る。
その場所は、この町の片隅にある。
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ふと、そんなコピーを考え出していた。モチーフは、目の前に見えるこの光景だ。由理は、いつものように、ベンチに腰を掛けてた。一方の俺は、ただぼーっと突っ立っていた。やはり、彼女には、どこか雰囲気があり、どこでだって絵になる。そう思っている。
俺は、由理の座るベンチに一緒に座って、町を眺めた。
そこは、高い崖の上であった。木と縄でこしらえた柵があり、ベンチが二つ設置され、散歩の休憩を誘われてしまう雰囲気なのである。そして、小さな桜の樹が一本、ベンチと並んで、添えられている。樹のそばにベンチを設置したのか、ベンチと共に植えられたのかは分からないが、不思議と落ち着く場所だった。そう、この場所こそが"あの場所"だ。この町の片隅にあるこの場所では、隣町が見下ろせる。
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