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遠く、一羽の鳥が輪を描きながら飛んでいた。
「あれ、鳶だね」
「ああ、いつも一羽だけ居るよな」
「鳶って、一羽で生きられるの?」
「さあ? 今度調べてみるか」
「今で、良いじゃん」
「えぇ~」
そう言いつつも、俺は、カバンからスマホを取り出した。もちろん、公立中学校がスマホの持ち込みを許すわけがない。だから、当然、登校中にスマホを持っていたらおかしいのだが、俺はどうしても必要なので、こっそり持っているのだ。せめて、電源を切っておくつもりだったのに、こんなことで使わされた。
俺は、鳶の生態を検索した。
「あぁ、良く分かんねぇーなぁ」
「えぇ~」
巣を作るとか、寝床がどうだとかは書いていたが、群れるのかどうかは、どこを読めば良いのか、良く分からなかった。
「本人にでも聞いてくれ」
俺は、視線を鳶本人へと向けた。
ピー ヒョロロー
鳶の声が聞こえた。
由理が訊ねてくる。
「今の何て言ってたかな?」
「よ、良く分かんなかったな……」
俺は顔をそらした。鳶の声を聴けなどというのは、当然冗談だ。あるかどうかも怪しい鳶語なんて分かるはずがない。ただ、何となく何かを威嚇しているのは感じた。結構、恐い。まあ、こっちに向けてじゃないよな?
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