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この場所では、俺達は昔から、こんな調子で、何でもない話を繰り返している。
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あれは、まだ、小学生の頃。
特に意味はなく、とは言っても何かあったような気もしなくもないが、とにかく気を晴らそうと、いつもとは違って遠くへ、俺は走っていた。アパートから少し遠い駅まで走って、そこから線路沿いにずっと走った。
何度も駅を通り過ぎた後、少し道を外れてみたら、小さな桜の樹がまるで手をあげて呼んでいるように、目に止まった。
気付けば、足を止めていた。
赤暗く、そして、色彩の薄い明るさがはっきりと表れていた。
既に日は落ちようと、赤く照っていたのだ。
影が差され、赤い強さを浴びても、淡いピンクはハッキリと存在を主張していた。
断崖で腰を掛けた俺は、崖下の町が赤く染まるのを眺めていた。不思議なことに、自分が座っているベンチの存在にすら、気付かず、座っていた。そして、ベンチはもう一つ、隣にあったのだ。
そこに彼女がいた。
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ピー ヒョロロー
鳶の声が聞こえた。
俺は、隣を見ていた。
そこには彼女が座っている。
「そろそろ行こうぜ」
「うん」
俺達は立ち上がり、さっき通りがかった学校に向けて歩き出した。
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