第一話 家族ではない。

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 鳥がピーチュクパーチャク鳴いている声に気づいて、目を覚ました。そうして、自分が今まで住んでいたアパートではなく、新築の一軒家に、今は住んでいることを思い出した。今まで住んでいたアパートは、起きるときに鳥の鳴き声なんかしない。だから少し、体がビックリしている。いつもスムーズに起きるのに、この家に来てから、鈍って、目すら開かない。しかし、引っ越してきて既に十数回と朝を繰り返しているので、割りと言い訳じみてしまっている気がする。まだ、この家に馴れないというのか。  パァーン!パァーン!  突如、フライパンを叩く音が鳴り響いた。音しか聞いていないのに、フライパンの音だと分かるのは、聞き慣れているからだ。 「武次(たけし)、起きろぉー!」  俺の名前を呼ぶ少女の声も響く。さて、起きるか。  体を起こして、その少女を見た。セーラー服を着た中学生だった。他には、フライパンとお玉を手にしていること位しか、特筆することは無いと思う。とにかく、いつも通り、由理(ゆり)が俺を起こしていた。  にしても、馴れないなぁ。  大きくあくびする。  由理に毎朝起こされるのも、由理がセーラー服を来ているのも、馴れそうになかった。
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