第一話 家族ではない。

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 午前6時。時計の分針が信用出来ないので、大体そのぐらいの時刻であることしか分からない。まあ、つまり、5時45分位かもしれないし、6時15分位かもしれない。この家の一番目立つ時計は、いつも曖昧なのだ。  俺達は、登校しようと、玄関で靴を履く。  俺は、由理(ゆり)に確認を入れる。 「ちゃんと荷物持ったか?」 「持ってくものほとんど無いもん」  持っていく必要があるとされているものは少ない、という意だろう。しかし、持っていくべきものが手元に無い、という意味にも文面上は捉えられてしまうことが、意味もなく気にかかる。まぁ、言う必要が無いので黙っておこう。 「始業式しかないもんな」 「じゃ、行こっか」 「あぁ」  俺達は、玄関から出て、鍵をかけた。ノブを回して、ドアが開かないか確認する。 「よし、大丈夫」  さて、行くか。  これから始まるのは、単なる登校ではない。散歩なのだ。
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