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勇一さんと別れた俺達は、踏み切りで、電車が通りすぎるのを待っていた。駅に停車するためにスピードを落としている電車が通過するのは、割りと遅い。ゆっくりゆっくり、ゴトゴトゴトゴト音を立てて、駅のホームに収まる。
踏み切りを渡ると、本当にすぐ隣に、水守中学校はあった。近過ぎて、軽く驚きを覚えるほどだ。
「この学校、電車の音がうるさそうだね」
由理が何気なく話す。確かに、駅からの距離は近い。電車が来れば、大きく音が響いてくるだろう。しかし、そもそも電車が来なければ、音はしない。
「いや、この駅そんなに電車来ないだろ」
小さい駅だからな。
「停まらないだけで、通過はするんだよ」
「あ、そっか」
そういえば、そういう駅だった。
そんな話をしつつ、俺達は学校の側のごく小さな門の前を通りすぎた。
「これは、正門じゃないよね? 小さいし」
「というか、錆びてるだろ」
「そだね」
どうでも良い話をしながら、俺達は学校を通りすぎた。
しばらく歩き、ようやく、あの場所が見えてきた。いつのまにか、歩調を落としていた俺を置いて、由理は先を歩いていて、目の前に背景と彼女の歩く姿が重なって見えた。景色の中、彼女が歩く。
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