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「そんなに古賀のこと好き?無理だって。あいつ、彼女にベタ惚れだもん」
川田はわたしの髪を梳くように撫で、うなじに優しくキスを落としてくる。ぴくっと身体を震わせると、「首弱いの、可愛いよな」と呟いた。
「大事にしすぎて簡単に手も出せないくらい、惚れてるみたいだし?おまえの入る隙なんてないよ」
その言葉に思わずカッとなって、「わかってるってば。いちいち言わないでよ」と、わたしの胸に触れていた奴の手を払い除ける。
別に、あの子から古賀を奪おうなんてこれっぽっちも思っていない。あんなに幸せそうな古賀を見ていたら、そんなことできないでしょ?
何年も同じチームで仕事してて、二人きりになる機会なんて数えきれないくらいあった。それでも、そういうことにならなかったのは──古賀が、わたしのことを「女」として見ていないからだ。
そんなの、分かってる。わざわざ川田なんかに言われなくたって。
喉の奥が熱くなって、目が潤みそうになる。……バカ、泣くな。こいつに見られたら絶対に笑われる。
わたしを抱きしめていた川田の身体がすっと離れて、起き上がったのが分かった。ほっとしたのも束の間──ベッドが微かに軋む音がして、奴がわたしに覆いかぶさってくる。
「悪い、苛めすぎた?」
「やだ、離れてよ。あっち行って。……ていうか帰る、まだ終電間に合うし」
「だめ。こんなに可愛い顔したおまえのこと、俺が帰すと思う?」
反論しようとした口をキスで塞がれ、そのまま両手をベッドに押し付けられて自由を奪われる。
「なあ、古賀のことなんて忘れて……俺のものになれよ」
息が苦しくなるようなキスの後、至近距離でまっすぐに見つめられて、優しく囁かれた。その大きな瞳がわたしを捕らえて離さない、そんな感覚に襲われる。
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