#3 再びあやまち、の水曜日

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──Side 航希 ──さすがに、やりすぎたかな。 すっかり疲れ果てて意識を飛ばしてしまった未央の身体をベッドの真ん中に寝かせて、布団を掛けてやる。 0時を回った今も、外は相変わらず豪雨のようだ。外壁を叩きつける激しい音のせいで、すぐには眠れそうにない。 明日も仕事だから、いったん家に戻るとなると──6時にはここを出ないといけない。未央は何食わぬ顔で出社するだろう。いくら寝不足でも疲れていても、こんなことで有休なんか使うはずがない。こいつはそういう奴だ。 「……寝顔、かわいいな」 未央の艶々(つやつや)とした頬をそっと撫でる。いつもの気の強さが信じられないくらいのあどけない寝顔だった。汗でメイクが落ちているせいもあるのかもしれない。 すっぴんは意外と幼いのかも、なんて思うと、ふっと笑みが零れてしまった。 今夜──もし断られたら、迫るのはもうやめようと思っていた。 俺だってだてに(・・・)遊んでいるわけではない。引き際くらいは心得ているつもりだ。 未央はその辺の男よりも余程はっきりした性格だから、どうしても嫌なら誘いに応じないだろう──とも思っていた。 だが、こいつは応じた。古賀のことで泣きそうになっているところを攻めたら、あっさりと。 気が強くて完璧主義で、他人に弱みなんて見せないと思っていた。そんな未央の弱い部分を見つけて、俺は少しいい気になってしまったのかもしれない。 目を覚ましたら、未央の中では全てなかったことになっているのではないか──そう思うと少し怖い。 「ん……」 呻くような声がして彼女の方を見ると、寝返りを打ったようだった。せっかく掛けてやった布団がめくれて、胸元や腕が丸見えになっている。 「意外と寝相悪いのかよ……」 俺は思わず苦笑して、もう一度布団を掛け直してやり、自分も布団に潜り込んだ。
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