#3 再びあやまち、の水曜日

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──Side 航希 こう見えて俺は、女を抱くときは優しく、がモットーだ。 初体験は15歳で、彼女でもない2つ上の先輩と。それからずっと、セックスとは、楽しく気持ちよく、変な感情を持たずに、プラスの感情だけで割り切ってするものだと思って生きてきた。 彼女がいたこともあったが、一人の女に縛られるのはあまり性に合わず──変に傷つけてしまうくらいなら、とセフレとして割り切って付き合える女ばかりを選ぶようになった。 ──こんなふうに抱き潰したことなど、今まであっただろうか。いや、ない。そもそも、ここまで本気出したこと、ここ数年であるか?……いや、ない。 自問自答して、ため息をつく。すやすやと規則的な寝息を立てて眠る未央の整った顔を、じっと見つめた。 ──俺はどうして、こいつに執着してるのだろう。 同情?面白半分?興味本位?美人だから?身持ちが固くて誰も落とせなかった女だから?……どれも違う気がする。 セックスの相性がめちゃくちゃ良かったから、してる(・・・)ときのこいつがすごく可愛いから──今のところは、それがしっくりくるような気がする。こんなにはっきりしない感情を抱くのはいつぶりだろう。 ひとつだけ分かるのは──あの金曜日の夜から、全てが変わってしまったってことだ。俺と未央の関係も、俺が未央を見る目も。 「……未央」 深い眠りに落ちている彼女をぐっと抱き寄せると、嫌そうな顔で手を払い()けられた。再び寝返りを打ち、あっちを向いてしまう。 「おい、そんなに嫌かよ、俺のこと」 怒ったようにそう呟いたが、もちろん返事はない。少し腹が立ったので、未央に背を向けて眠ることにする。 ──これはいったい、どういう感情なんだろう。 俺がいま、確かに感じているのは──こいつを手離したくない、ということだけなのだ。
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