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#3 再びあやまち、の水曜日
──自分で知らなかっただけで、わたしってバカな女だったんだろうか。
22時過ぎからひどくなった雨が、外壁を猛烈な勢いで叩いている。夜中まで続くって言ってたな、と今朝の天気予報をぼんやりと思い出した。
「あ、また後悔に苛まれてる」
川田がタバコを咥えながら乱れた髪をかき上げて、からかように言った。美味しそうに深く吸ってから、煙をゆっくりと吐き出す。
程よく筋肉がついて均整のとれた身体が、奴の童顔とアンバランスで──だが、それも魅力の一部だと捉えられているのだろう、と思う。
「やっぱり俺とおまえ、すげえ相性いいよな」
「……知らない」
「もう、諦めてセフレになれよ。相性いいのは分かってんだろ?」
何も答えずに布団を引っ張りあげて顔まで覆った。川田は「え、もう寝るのかよ」とせっかく掛けた布団を引っぺがし、わたしの頬に軽くキスを落とす。
「な、未央」
「気安く呼ばないで」
「さっきまで俺のことだって名前で呼んでたくせに」
川田はわたしを後ろからぎゅっと抱きしめて、やわやわと胸を揉み始める。ふんわりと香る、タバコとシトラス系の香水が混じったこの匂いは、奴のものだと──すっかり覚えてしまった。
「嬉しくて、つい本気出しちゃってごめんな」
何回もイったから疲れただろ?硬くなった胸の頂を弄られながら髪に優しくキスされて、散々したはずなのに下半身が疼いて熱くなるのを感じた。
──ああ、わたしも大概だ。こうして流されてしまうのだから、結局自分だってしたかったんじゃない。嫌いだったはずの男と、こんなふうに裸で抱き合って。
「俺、おまえとするの、癖になりそう。古賀にバラすなんてもう言わないから──いいだろ?」
その名前が出た瞬間、我に返って身体がぐっと強張ってしまう。わたしにべったりとくっついている川田にはそれが伝わってしまったらしく、「あいつのことになると分かりやすいな」と低い声で笑われた。
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