#4 曖昧な関係と日々

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月曜日の朝、エレベーターを待っていると、後ろからポンと肩を叩かれた。最近何かと一緒にいるせいだろうか、気配だけで嫌な予感がする。 「……うわ」 「うわ、ってなんだよ。普通におはようって言えねえのかよ」 そこにいたのは予想通り、ストライプ柄の薄いグレーのスーツに身を包み、短めの髪をハードワックスできっちり整えた航希(こうき)だった。 「はいはい、おはようございます、川田(かわた)くん」 わたしはすぐに航希から目を逸らして機械のように言う。──やだなぁ、早くエレベーター来ないかな。こういうときに限って全然降りてこないんだよね。 「で、先週の金曜日は何をしてたんですか?香坂(こうさか)さんは」 航希がわたしの横にすっと並び、茶化すようにそう訊いてくる。 「友達とご飯」 「へえ。女の子?」 「当たり前でしょ。アンタと一緒にしないで」 ていうか、ここで馴れ馴れしく話しかけないで。ぴしゃりと言ったそのとき、「あ、未央(みお)ちゃん!」と高い声がエレベーターホールに響いた。 「ゆりちゃん、おはよ」  声の主は、総務部所属の同期、ゆり(・・)ちゃんだった。彼女はバッグをゴソゴソやって、可愛らしいピンク色の小さな包みを取り出す。お姫様のドレッサーみたいなディスプレイが特徴のコスメブランドのものだ。 「これ、ささやかだけど誕生日プレゼント。よかったら使ってね」 同期の中でも彼女とは仲が良く、お互いの誕生日にはプレゼント交換をしている。わたしはその包みを「ありがとう」と受け取った。 ゆりちゃんにもらうプレゼントは可愛らしくて自分では買わないものばかりで、毎年密かに楽しみにしている。今年は何かな、家に帰ったらさっそく開けてみよう。 じゃあ、わたし行くね。ゆりちゃんは笑顔でわたしと航希に手を振って、階段の方に向かった。 「……おい、ちょっと待て。誕生日って誰が」 エレベーター、まだ来ないな──そう思って階数表示を睨みつけていると、左隣から航希の低い声が聞こえた。
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