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保健室に柚葉が飛び込んで来た様子を思い出しながら炒飯とスープを食べ終えて、食器を流しに運んで洗おうとしたら凛に止められた。
「青藍、俺が洗うからいいよ。また肩を痛めたんだろ?あっちで休んでて」
「え?なんでわかったの?」
「ふふ、俺は青藍のことなら何でもわかるよ。生まれた時から見て来たんだから。ごめんね、俺のせいでずっと苦しめてる…」
「凛!もうっ、また僕を怒らせる気?肩の後遺症は、僕が勝手なことをしたからなんだよ。凛のせいじゃないっ。今度言ったら凛のこと、嫌いになるから…っ」
凛の肩を掴んで、僕はわざと睨みつける。僕と同じくらいの身長の凛の目を覗き込むと、泣き笑いのような顔をした。
「青藍に嫌われるのは辛いなぁ。わかった、もう言わないよ。じゃあ青藍、あっち行ってて」
「凛だって病み上がりなのに…。これバレたら絶対に銀おじさんに怒られるヤツだ…」
ブツブツと呟きながら居間に戻る僕を、凛がやっと笑って見ていた。
翌日、少しドキドキしながら家を出た。
今日は昼から入学式がある。僕は午前中で終わるけど、帰る頃には新入生が登校して来る筈だ。
天清と会うことが出来るかもしれないと思うと、また昨夜もあまり眠れなかった。
教室に入り自分の席に着くと、すぐに光穂が寄って来た。
「青藍、おはよう」
「あ、おはよう光穂。昨日大丈夫だった?」
「大丈夫。アイツにちょっと噛み付かれたけど、俺も牙を食い込ませてやった」
「え…それって毒が…」
「ああ、入ったな。でもほんの少しだ。妖なら何の害もねぇ。身体が痺れるぐらいだ。その後、動けなくなったアイツを放置して帰って来たよ」
「光穂…、逆恨みされないように気をつけた方がいいよ」
「大丈夫だと思うけど。でもわかった、気をつける」
ニコリと笑う光穂の後ろから、視線を感じて顔を上げる。廊下に面した窓の向こうに、光穂に毒を入れられたという妖の男が、光穂ではなく僕を睨んでいた。
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