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睨んでくるしろおじちゃんを無視して、僕は顔だけ後ろに向けて凛を見る。
「ん?どうしたの?」
「ううん。凛は、いつもいい匂いがするね。僕、凛に抱っこされるの…好き」
「ふふ、ありがとう。俺も、青藍が好きだよ」
「ほんとにっ?」
僕は、身体ごと凛の方を向いて、正面からギュッと抱きついた。
途端にしろおじちゃんが、僕の腕を掴んで凛から離そうとする。
その手を凛が掴んで、しろおじちゃんを睨んで言った。
「も〜、だから青藍相手に本気になっちゃダメだってっ。俺のこと、お兄ちゃんみたいに思ってくれてるんだよ?俺、弟がいないから、青藍に懐かれて嬉しいんだ」
「く…っ」と悔しそうに唇を噛んで、しろおじちゃんが僕から手を離してソッポを向く。
そんなしろおじちゃんに溜息を吐いて、凛が僕の頭を撫でながら「あ、そうだ」と大きな声を出した。
「青藍にお土産があるんだった。え…と、はいこれ。青藍が前に欲しい…って言ってた絵本だよ」
「え?覚えててくれたの?ありがと!凛、大好き!」
ギュッと凛の首に腕を回してしがみつくと、しろおじちゃんが、素早くこちらに手を伸ばす。それを凛が片手で止めて、僕の顔を覗き込んだ。
「そんなに喜んでくれたら、俺も嬉しいよ。ほら、開けてみて」
「うんっ」
再び前に向き直って、凛から手渡された袋を覗く。中には、以前にお母さんと人間界に行った時に立ち寄った本屋で見かけて、ずっと気になっていた絵本が入っていた。
二週間前に凛が来た時にその本の話をしたら、「探しておいてあげる」と笑って言ってくれたんだ。
でも、凛は忙しいから、まだまだ先だと思っていたのに。
僕は嬉しくて、絵本を胸に抱いて立ち上がり、凛に振り返って笑顔でお礼を言った。
「すっごく嬉しい!大事に読むね。僕、大っきくなったら、絶対凛をお嫁さんにするっ!」
「ふふ、そっか。そんな風に言ってくれて嬉しいよ。でも、ごめんね?俺は銀ちゃんの嫁だから…」
微笑みながら言った凛の言葉に、僕は頰を膨らませてしろおじちゃんを見た。
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