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凛は、今年二十三才になる。
僕とはだいぶ年が離れてるけど、そんなのは関係ない。だって凛は、今年からしろおじちゃんの会社で働いてるけど、まだ学生みたいに若く見えるから。それに、色が白くて小さくて可愛いんだ。
僕が赤ちゃんの時から可愛がってくれて、とても優しいし、凛からは、とっても甘くていい匂いがする。僕は、そんな凛が大好きなんだ。
今はしろおじちゃんと結婚してるけど、僕がもっと大っきくなったら、絶対にしろおじちゃんよりも強くカッコよくなって、僕と結婚してもらうと決めている。
僕はしろおじちゃんを睨むと、「僕、しろおじちゃんには負けないもん!」と叫んだ。
「青藍、何大きな声を出してるんだ?」
その時、静かな声がして、お父さんが客間に入って来た。
僕は下を向いて、また凛の膝の上に座る。そんな僕の傍にお父さんが来て、僕を抱き上げた。
「また凛を困らせてるのか?おまえが凛を好きなのはわかるけど、凛はしろの嫁なんだ。いい加減諦めろ」
「やだっ!絶対に凛を僕のお嫁さんにするもんっ」
「はぁ〜…。しろ、凛、すまないな。青藍はよほど凛が好きなんだよ。そのうち諦めるだろうから、青藍の気が済むまで我慢してくれ…」
僕は風船みたいに頰を膨らませて、お父さんの肩に顔を埋めた。
「くろがちゃんと言い聞かせろよ」
「銀ちゃん、いいの。俺は青藍が好きと言ってくれるの、嬉しいんだから」
「はぁ?じゃあ凛、聞くが、おまえが一番好きなのは誰だ?」
「そっ、それは…銀ちゃんだけど…」
「だろ?ならあやふやにしないで、ハッキリと言ってやれ」
「しろおじちゃんのバカッ!」
「青藍」
しろおじちゃんに怒鳴った僕を、お父さんが注意する。僕はみるみる目に涙を溜めて、小さくしゃくりあげて泣き出した。
「青藍…。しろより強い天狗になるんだったら、こんなことで泣いていてはダメだろ?」
「だ…って!しろおじちゃん、意地悪なんだもん…っ」
「あれは、ヤキモチと言うんだ」
「…ヤキモチ?」
「凛が、青藍が好きだと言ってくれて嬉しいと言ったから、悔しくなったんだよ。しろもいい年をして、子供相手にムキになるのやめろよ」
いつの間にか凛が僕の傍に来て、心配そうに僕を覗き込む。
「大丈夫?銀ちゃんは偉そうに言うけど、青藍のこと、大事に思ってるよ?だって、本当はこの本、銀ちゃんが探して買って来てくれたんだよ」
「え?」
僕が驚いてしろおじちゃんを見ると、しろおじちゃんは苦い顔をして後ろを向いてしまった。
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