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僕の視線に気づいて、先生が首を傾げる。
「なんだ?俺の顔に何かついてるのか?」
「先生…、ついでに少し休んでいってもいい?昨夜あんまり寝てないんだ」
「しょうがないな…。一時間だけだぞ?」
「ありがとう」
僕はお礼を言うと、シャツのボタンを止めて上履きを脱ぎ、ベッドに上がって先生を見た。
「先生…、僕が寝てる間に変なことしないでよ」
「するか。俺も暇じゃないんだよ。そこで仕事してるから早く寝ろ」
「うん。一時間経ったら起こして」
「人使いの荒い…。わかったよ」
早く寝ろという風に手を振って、先生はベッドから離れて机に行ってしまう。
僕は、ベッドの周りのカーテンを引くと身体を横たえさせ、窓の外から響く喧騒を聞きながら、ゆっくりと目を閉じた。
うとうととはしたものの、そんなには眠れずにぼんやりと考えごとをしていた。
そもそも昨夜寝れなかったのは、天清のことを考えていたからだ。
天清と離れてから三年、いまだ天狗族と妖狐族は仲直りをしていない。
だけど、個人的に仲の良い友達に会うことは、許されるようになっていた。
だからかわからないけど、天清が僕と同じ高校に来るという話を、凛経由で聞いた。
天清…、やっと天清に会える。
この三年で僕の身長は伸びた。三年前の天清に、少しは近づいただろうか?
それとも天清は、もっと背が高くなってるのだろうか。
僕と同じ高校に来るということは、僕に会いたいと思ってくれたからだろうか。
離れていてもずっと好きだと言ってくれた天清。
まだ、変わらずに僕を好きでいてくれてる?
保健室の天井を眺めながら天清のことを考えて、一人顔を綻ばせていると、保健室の扉が勢いよく開いて、柚葉が飛び込んで来たのだ。
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