出会い(完)

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出会い(完)

「早苗!」 「?!」 「会いたかった。」 「えっ、ちょっ、えっ。」 「もう離さない。」 勇二はぎゅっと女性を抱きしめた。 「ちょっと・・・。」 「もう、会えないかと。」 「だから・・・。」 女性は左手を握りしめて、 「何すんのよーっ!」 どかっと彼の頬を殴った。 「ぐわっ!」 「全く、もう。」 「えっ、早苗?」 「私は早苗じゃないわ。」 「え?」 「早苗の双子の妹の美苗よ。」 「えっ、じゃあ早苗は?」 「もう結婚して、ここから出て行ったわ。」 「そ、そうか。」 彼はシュンとした。 「貴方は姉さんの何?」 「僕か?僕は早苗の元彼だよ。」 「元彼・・・。」 「僕が県外の大学に行くのを気に別れたんだ。」 「そ・・・。」 「双子の妹がいたなんて聞いたことなかったが。」 「両親の離婚を気に、姉さんと私は、別々に引き取られたの。」 「そうなのか。」 「えぇ。」 「しかし、ここで早苗の縁のある者に会えるのも何かの縁か。」 「えっ?」 「この橋はよく早苗と来たんだ。」 「・・・。」 「彼女は言ってた。『ここは大切な場所』だって。」 「ここは・・・。」 美苗は動揺して震えながら言った。  「ここは、姉さんと決めた大切な場所なの。」 「えっ?」 「『山に沈む夕日が綺麗な場所だったから。二人の秘密にしよう。』って。」 そして、彼は思いだした。 (「ここは家族と、うんうん離れた妹と大切な場所なの。」) 二人は無言になった。 (そういえば早苗はそんなこと言ってたな。妹と大切な場所だって。) 「・・・姉さんにとって、貴方は大切な人だったらしいわね。」 「・・・。」 「もうここは姉さんと二人の秘密じゃなかったんだ。」 美苗は寂しそうに山に沈む夕日を見ていた。 「あのさ・・・。」 「?」 「君は彼氏はいるのかい?」 「いいえ、最近別れて寂しくって、ここに来たの。」 「そうか。」 「・・・。」 「僕は昨日からここに就職して戻って来たんだ。」 「そう。」 「もう、知り合いも何人残っているか分からない。これも何かの縁だ。もし良かったら友達にならないか?」 「私は姉さんみたいに甘くないわ。」 「分かってる。早苗は少なくとも殴ったりしない女だ。」 二人は笑った。 「そうね。これも姉さんが結んだ縁ね。」 「あぁ。」 二人はもう山に沈んだ日の方を見ていた。 空は赤く染まっていた。
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