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悠ちゃんが、僕を抱え上げて湖から岸辺に上げる。悠ちゃんも上がって来て、もう一度、僕をしっかりと抱きしめた。何度も背中を撫でられて、やっと落ち着いてきた僕は、ビクリと肩を揺らして息を詰めた。
ーー正司さんは…どこ?また僕を捕まえに来る?…いやだっ、怖い…っ。
先ほどの追いかけられた時の強い恐怖を思い出して、ガタガタと震えながら辺りに顔を巡らす。
数メートル先に正司さんの姿を認めて、僕は小さく悲鳴を上げた。
「ひっ!あ…やっ…」
「玲、大丈夫だ。よく見てみろ。涼と拓真があいつを押さえつけてるだろ?それに…」
悠ちゃんが、森の中へと目を向ける。僕もつられて見ると、小道の奥から、三人の警察官が走って来た。
すぐに涼さんが声をかけて、何か話しながら警察官に正司さんを引き渡す。二人の警察官が正司さんを元来た道へと連れて行き、残りの一人に僕は事情を聞かれた。
僕は、いきなりお腹を殴られて気を失ったこと、気がついたら肩に担がれて運ばれていたこと、正司さんの腕に噛みついて、必死に逃げたこと、捕まるのが怖くて湖に飛び込んだことを、震える声で、途切れ途切れに説明をした。
悠ちゃんはずっと僕の肩を抱いていて、僕が言葉に詰まると、代わりに話してくれた。
悠ちゃんの「怖い思いをしたからすぐに休ませたい」という言葉に、僕はすぐに解放してもらえた。
足が震えて歩けなかったから、悠ちゃんに背負われて別荘へと帰る。僕たちの後ろを、涼さんと拓真が、心配気について来る。
ーーなんでここに、涼さんと拓真もいるんだろう。
そう不思議に思ったけど、今はただただホッとして、僕は悠ちゃんの肩に頰をつけて、大好きな匂いを吸い込んで、また涙を零した。
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