不協和音

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僕がもたもたと食べてる間に、悠ちゃんは、素早く食事を済ませて食器を流しへ運び、洗面所に行ってしまった。 僕は小さく溜め息を吐いて、残りのスープを飲み干す。昔から僕は食べるのが遅い。小さな頃は、僕が食べ終わるまで、悠ちゃんはずっと待っていてくれた。今は一緒に食事はするけれど、無言でさっと済ませてしまう。 もう一度溜め息を吐くと、食器を流しに運んで洗い始めた。 「玲、先に行くから」 「えっ、あ…うん…」 洗面所から戻って来た悠ちゃんは、ドアの側に置いていた荷物を持ち、リビングから出て行こうとする。僕は慌てて悠ちゃんにお弁当を渡した。悠ちゃんは、無言で受け取って、リビングから出て行った。 僕と悠ちゃんは、同じ高校に通っている。僕が一年生で悠ちゃんは二年生だ。でも、一緒には行かない。僕は悠ちゃんと行きたいと思ってるけど、悠ちゃんがそれを許してくれない。 僕は、洗い物に視線を戻すと、瞼を何度か瞬かせる。泡の立つ食器を持った僕の手に、目から零れた雫がぽとりと落ちた。 悠ちゃんが出た十分後に、僕も家を出た。 悠ちゃんは、僕よりも一本早い電車に乗るつもりで、いつも早く家を出ている。でも、僕は悠ちゃんと同じ電車に乗りたくて、走って駅に向かう。 駅に着いた頃には、いつも僕は息を切らせて肩を大きく上下させる。落ち着く為に、壁にもたれて目を閉じて、何度か深呼吸を繰り返し、息を整えようとする。 僕は、あまり身体が丈夫ではない。よく貧血を起こして倒れることもある。だから、本当は無理して走るのもよくないんだ…。 少し目眩がしてきてどうしようかと思った時、正面から僕を呼ぶ声がした。 「玲っ、どうした?気分が悪いのか?」 聞き慣れた声に顔を上げると、目の前には、高校に入ってからの一番の友達、宮野 拓真(みやの たくま)がいた。
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